給料格差? 

いつか連載で書こうと思っていたのですが、書ききれないのでこちらに。
良く日本から来る先生方が「最近のポスドクは給料が良すぎる。それならもっと働いてもらわないと困る」という内容のことをおっしゃるのですが、半分納得しつつも半分は同意できない部分があります。確かに一部の特別プロジェクトのポスドクの給料は破格だと思います。ただ、そこに含んで考えなければならない部分がいくつかあることを忘れてはいけません。
前回のバイオテクノロジージャーナルの連載でもふれましたが、ポスドクの生活は一様に厳しいです。給料が多少良くても。なぜか?
1.給料には福利厚生は一切含まれません。家賃は額面を自分で払い、健康保険は国民健康保険。もちろん健康診断もなく、病気で倒れても誰も助けてくれません。
2.年齢的に20代後半。大体結婚するかしない化くらいの年代ですが、よほど奇特な人理解のある人でないとそんな酔狂な人と一生の誓いをしてくれる人はいません。
3.これが一番大きいのですが、次の職への保証がありません。昔は助手になるためのステップであったポスドクですが、今は多くのポスドクの契約が「3年後の4月1日には別の所に行ってください」という大前提があります。多少の前後はあれ、この3年の間に成果を上げて、就職活動もしなければならないことを考えてくれているボスは殆どいないでしょう。
さてスタンフォードと比べると、まずスタンフォードのポスドクの最低給料と比べると、日本の(たとえば学振)とほぼ同じと思います。しかーし、ここは交渉の国アメリカ!この額面がそのまま給料になっていると思ったら大間違い。やり方次第で給料もアップできるわけです。まずFellowshipを持っているとそれに色を付けてもらうのは比較的交渉しやすいでしょう。さらに、自分の成果がボスのグラントに直結していて、それが元でグランとを獲得できればかなり交渉へのカードとして大きな物になります。搦め手としてはボスのメインのプロジェクトから少し外れるグラントを独自に書いてボスの名前を借りて出す→獲得できれば自分のプロジェクトとしてさらに交渉のカードとできます。(アメリカ人はこうやって獲得したグラントを継続してJob Huntingの時に利用するそうですが、ブッシュ政権の間は獲得するのは大変だと思います。)

毎年サイエンスなどにもポスドクの平均給料は掲載されますが、それは大学経由の給料なので、アメリカのポスドク達はその辺うまくやってナントカ自分の食い扶持を他からも稼いでいると思われます。ここまで考え合わせると、人材の流動が活発なアメリカと、硬直してる日本でのポスドク生活、大きく違いますよね。日本では臨時雇い扱いでローンも組めないのに、アメリカではポスドク(というか学生)のうちから共働きで家を買う人もいます。

数値データは例によって引用してませんが、体感経済感覚では日本のポスドクの状況はだいぶかわいそうだとやはり思います。そして、「優秀なポスドクを育てる」といくら旗を振っても、一部の有名ラボ出身者を優遇するばかりでは、日本のサイエンスのボトムアップにはつながら無いと思います。研究以外のキャリアを選ぶ人は実はその業界(私の場合はバイオ)の宣伝役となるはずなのに、ただの切り捨てで良いのか? 前回の連載にはこういう疑問を含めたつもりでしたが伝わりましたでしょうか? 
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by KtomoSFD | 2005-11-05 13:03 | Bio Research