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ばい菌/Germ という表現

JTPAの渡辺千賀さんのBlogでのBest Entryをずーっと続けているばい菌回路なんですが、一応Biologistの目から見ると、「へー、そういうのをばい菌と呼ぶのか」と意外でした。

実際にはファージ(細菌に感染するウイルス)の表面にランダムにペプチド配列を表示させる「ファージディスプレイ法」を応用した方法のようです。この方法は元々、ある特定のタンパク質に結合する別のタンパク質を同定する(探してくる)ために開発された方法ですが、同じような技術の中では中程度に使われている、まぁそこそこの技術です。決してすごいテクニックではない。これをタンパク質との結合ではなくて、半導体と結合させるとは…確かにうまいことを考えたものですね。自己増殖できるウイルスを使うので、一旦結合したペプチドを持つウイルスを増殖させて、さらに良いものを作ることが可能です。実際には増幅する際に細菌(おそらく大腸菌)を使うので「ばい菌回路」というわけです。っていうか、「ウイルス回路」の方がぴんと来るんですが、そう書いてしまうとなんだかスパムを送信するための回路みたいですね。世の中には重金属を貯め込む生き物もいるくらいなので、確かにペプチドが半導体の表面を認識するというのはあり得るわけです。そしてその配列をPCRなどを使ってさらに「進化」させることも可能なんですよね。これはBiotechならではです。

バイオの世界では似たような発想として、酵素を改変して自分の好きな化合物を作らせることや、抗体をさらに進化させていろんな化学反応の手助けをさせてやるという発想はありました。これらはすべて改変する部分は小さいものの、分子量としては数万単位の結構大きな分子となり、しかも物質を認識する部位はタンパク質の比較的内部にまで奥まっていることが多いのです。それに対するとペプチドというのはせいぜい20アミノ酸までなので上述のタンパク質に比べると10-50分の1くらいの大きさしかなく、しかも進化的な手法もつかえる、もってこいのネタに仕上がるわけです。さらにもう一つつっこむと、生物学的に進化したペプチドはその分子構造をいじってやることによって化学的に安定な物質にも変換しうる… すばらしい! こう書いていると自分がバイオをやっていることに誇りを感じます。

さて、表題の「ばい菌」ですが、私はこの表現は苦手です。もちろん小さい頃は何も知らずに使っていましたが、その「ばい菌」を飯の寝たにしている以上、手についているばい菌と納豆を作るばい菌はもちろん区別しますし、それぞれの環境に適したばい菌達の生き様に見せられ手しまった以上はバイキンマンとて尊敬の対象になってしまいます。なので、それに変わる表現がどうしても見つからないとき以外はできるだけ学名や無難な通称名を使うことにしています。5年ほど前、日曜日にバンドの後輩を連れてラボに寄って酵母の遺伝子組み換えの状況をチェックしたところ、次の日には「○○さん、ばい菌見てにやにやしてたよぉ、かわいいとか言ってさぁ」と変人扱いされたものです。ミミズやアメンボだけやなくてばい菌も生きとんねん!